去年は日経平均で1100円ほど上がっているが、個人投資家で儲かったという人は少ない。実は東証マザーズやヘラクレスの指数では、去年1年で半分に下がっており、個人投資家の人気株であるソフトバンクも半値に下がった。昨年の値上がり株を眺めてみると、外国人の投資対象になっているものが多く、個人の持っている株は相対 的に値下がりとなっており、東証1部1730社の内、去年1年で値上がりしたのは528社、全体の30%に過ぎない。
日本の株式市場は、今年に入って新たな様相を見せ始めた。
一つめの変化は、個人投資家が市場に戻り始めている点だ。昨年、ベンチャー株などで損をした個人投資家などが市場にもどったときに選択するのは、投機的うまみはないもののリスクの低い大型株、電力や鉄鋼などである。さらに不動産投資信託(Jリート)が買われているが、その買いの主体は投信などのファンドなのだ。
もう一つの変化は不動産の上昇傾向である。実体経済がかなりインフレのほうへ傾きつつあるが、デフレ政策を維持されているため、そのギャップが株式市場、不動産市場には底上げ要因となっている。そして不動産の上昇が続いていることが株式市場にとってはプラスの影響を及ぼしているようだ。今年2月には三菱地所株が20年ぶりに最高値を更新、三井不動産株も上場来高値に近づいている。また、海外投資家の目からは日本の不動産の値上がりは今後も続くと強気の見方が多く、そうした資金も不動産株、不動産ファンドなどに注がれていることもあろう。
こうした環境から、今後の相場展望をする。
過去3年は低金利を享受してきた金融株が相場をリードしてきたが、昨年あたりからは頭打ちから低落傾向が見え、代わりに国際優良企業が上昇し始めている。その変化の要因として、まずはゼロ金利からの離脱がある。次は業績である。電機、精密、自動車といった輸出型企業の業績は好調で、その割りにこれまで株価に反映されてこなかったからだ。
もう一つの変化は、個人投資家の持つ株はなかなか上がらないということだ。個人投資家の投資行動は、上がったときにすぐ売り、下がるときはじっと持つ。そのため、今年は個人投資家がバブル崩壊以降保持してきた株を放出する傾向になる。しかし海外投資家などが買いに走ってくるなど、相場は今後も強気に見ていいと思われる。
個別企業を見てみる。重化学の時代とは全く異なる新たなビジネスをしている化学部門が業績を伸ばしており、その代表の一つが昭和電工だ。ハードディスクドライブが伸びており、納入先にはiPodのアップルがあり、6月にはiPhoneも発売されるため、昭和電工がHDDを受注する可能性が高く、注目される。
中国の需要を受け、昨秋より日本のセメント市況が上がり始めており、宇部興産なども業績を伸ばしているので、注目株の一つだ。
次にソニーだが、昨年はここ数年では最悪の年だった。今年に入り少しずつ株価が持ちなおしてきたのは、ゲーム事業主体からデジタル家電に大きく舵取りを戻す動きが見え、注目したい。
造船の大企業が大きく変わり始めている。造船のウエートを下げ、ジェット機の部品に力を注ぎ、エンジンは三菱重工、胴体は川崎重工、尾翼は石川島播磨重工業がボーイングに納入することになった。新型機の需要が伸び、今後、造船の中でも航空機産業が新たな儲けの事業となり、株価にも影響しよう。さらに本業の造船業も、円安の影響で採算も取れ始め、造船の中でも石川島は特に要注目と思われる。
自動車産業での新たな動きは、いすゞがディーゼル分野でトヨタと提携したが、エコ的観点からディーゼルエンジン車の普及が促される予測もあるので、いすゞの株価は今後大きく伸びる可能性がある。
新興市場では、携帯で電子商取引を行うDNAが好業績で注目される。特に、ファッション誌で最新衣料をチェックし携帯で注文できるパターンが若者に受けているようだ。
松本 貴司 氏
岡三証券(株)証券情報部長