新政権の政治と経済

テーマ:「新政権の政治と経済」

平成18年10月例会
ゲスト/杉田 亮毅 先生

◆ 次期の参院選、衆院選を睨んで

 安倍政権の頭の中を、二つの選挙が占めていると思う。
 19年夏の参院選が第一のハードル、20年秋に想定されている衆院選の二つである。それらをどう勝利していくかというところから、政策は立てられつつある。世論調査やテレビでの印象で支持率が変わり、それによって投票行動も左右されるため、選挙を意識した政策推進はやむをえないところであろう。
 まず安倍首相が真っ先に外遊先に選んだのが中国と韓国というのは、両国との関係を改善して小泉政権との違いを明確にするとともに、19年夏に両国との首脳会談を持って緊密なアジア政策への布石としていくという流れにしていくためだ。あとの経済政策などは、基本的には小泉政権の政策を踏襲して若干いろいろな配慮を加えていくということで、改革路線は小泉政権よりはトーンダウンしていくようだ。しかし、中韓との関係修復が成されれば、参院選もうまく乗り切れるだろう。
 次に控える衆院選が本番といえるが、そのキャスティンボートを握るのが消費税問題である。参院選後に消費税増税に関する細かい詰めがなされ、20年に法案提出、21年1月ないし4月よりの実施、アップ率は2〜3%というのが大筋のシナリオだろう。衆院選をにらんで法案提出を先送りしようとの議論が出てくる可能性もあるが、安倍政権の支持率次第でもある。

◆ 外交と経済政策

 安倍政権の外交では中韓との関係修復はなされようが、決して中韓の言いなりにはならずに、アジア経済圏でイニシアチブをとりたい思いがある。ただ中国が主導する形になりそうな勢いがある。日本の出遅れもあるが、FTA(自由貿易協定)における中国のアジアに対するポイントが高いのだ。日本は国内の農業保護が優先するため、市場開放を約束しづらい。そこで安倍政権としては、アジア経済圏にインド、ニュージーランド、オーストラリアを含めて中国をけん制したいのだが、後者2国をアジアに含めるには抵抗もある。しかしアジア重視の外交は、少子化の進む日本が豊かさを保つために、21世紀に成長率の高いアジアに市場を広げる必要があり、そのためにもこの2国と関係は密にしておくべきだからだ。

◆ 日本経済の動向と消費税問題

 日本経済はまずまずの状態で推移している。デフレ経済で実質GDPのほうが高かったのが、昨年第2四半期で解消し、賃金の先行きも好転している。ただ、米経済の足踏みを懸念して株価が足踏みしている点、原油高でも技術で高騰分を吸収してきたがどこまでもつかと懸念される点などはあるが一方、景気の好調を反映して税の増収が昨年に引き続き今年度も期待されるだけに、消費税増税と同時に法人に関わる減税も検討課題に上がってこよう。
 さて消費税増税は歳出削減との関係が重要になってくる。安倍内閣の布陣を見ると、成長による自然増収と歳出削減で消費税増税を最低限に抑えたいと思っている成長志向の内閣であることが分かる。ただ、波乱要因は社会保障だ。平成21年に年金の国庫補償比率を3分の1から3分の2に増やすとともに、年金支給を賃金の50%にするという年金改革法を通過させたのだが、試算の元になった出生率を高めに想定しているため、絵に描いた餅になりかねない。国民にとって最も関心が高いのは安定して年金制度の確立であり、参院選、衆院選などをにらんで一層、政策の舵取りは微妙になってくることになろう。

杉田 亮毅 氏杉田 亮毅氏
日本経済新聞社社長

昭和12年 長野県出身
昭和36年 横浜国立大学卒 日本経済新聞社入社
昭和46年 ワシントン特派員
昭和59年 東京本社編集局経済部長
平成02年 東京本社編集局長
平成10年 代表取締役専務 
平成12年 代表取締役副社長

平成18年より現職