日本の経済において過剰とされた設備、雇用、債務が統計上は解消された形となっているが、現実にはそれぞれの問題点は別な様相にシフトしている。確かに設備過剰はなくなり、設備投資も出てきたが、その割には実際の投資が行われていない。正規採用の社員が増えてきた一方、ニート、フリーターも増えて格差が広がり、社会のゆがみが増している。また、民間の借金は国と地方の借金にすり替わり、歳出カットや消費税増税ヘの関心が高まりつつある。
財政を再建するには、歳入を増やすか歳出を減らすか、あるいは両方しかないわけであるが、政府としては当然、経済を成長させて税収を増やすことで、できるだけ歳入歳出の増減に手をつける度合いを減らしたいというのが本音といえる。
総裁選に向けて安倍氏が訴えた施政方針の核となったのが経済における再チャレンジという考え方だった。これは、がんばって勝った人がそれなりの評価を得ることに反対する向きはないが、がんばったのに負けた人に再チャレンジのチャンスを与えられる社会の仕組みがあってしかるべきだという考え方である。もちろん、がんばることのできない人、いわゆる社会における弱者を支える仕組みも必要だ。
外交面から見て、これからの日本のあり方はどうあるべきかを考えたい。
今や経済規模でいえば、世界は米、EU、そして東アジアも含めたアセアンで3極化しつつある。名目GNPの世界全体によるシェアは、日本が11.9%、中国は3.9%だが、これに対し国防予算のGDP比では日本が0.97%で中国を得なくなる。今の防衛水準を保っていくとすれば対米追従と見えるかもしれないが、日米の同盟関係があってこそ初めて日本が生き残っていけるといえよう。
日本の常任理事国入りは、日本がそれに値するだけの貢献をしているか、持てる力がそれだけあるか、政策決定の仕組みも常任理事国に値するだけのものになっているか、などの点にかかる。例えばアフリカの国に日本は24の大使館を出しているが、アメリカは45、中国は46である。日本のODAは世界第2位だが、内容をみると円借款が多く、返済される分を考慮すると、第5位となる。
次に国力を見ると、軍事力は持たないから、経済力の比較になるが、製造業の面では、多くの分野で1位を占めるなど、かなりの国力を保持している。にもかかわらず、国連の場で幹部職員に占める日本人の数が列国に比べてかなり少ない点、なかでもPKO職員の数が少ない点を考慮すると、分担金の割合が高いのにその分の貢献をしているとはいえないのではないか。
私はこのほど、外務省に「世界の中の日本・30人委員会」という勉強会を作った。もっと日本が世界の中で力相応の貢献をし存在感を高めるためには、いったい何をすべきか、また、日本にもっといい資金、いい人材が入るようにするためには何をすべきか、の2点を主題として提言をまとめようと思っている。
今後、世界でさまざまな貢献を果たそうとするとき、そろそろ政治主導で取り組むべきだと考える。例えば英国では、首相や大臣は周囲に民間人のアドバイザーを置き、役所の知恵とブレンドしながら政策作りをしている。それには、政治家は自らの責任で政策を作り、その責任は選挙で問われるとの政治理念が徹底されているからだ。
今の日本でいきなり政治主導の政策作りをベースにすえるには準備不足だが、遠からず官だけに立案を押し付けるのではない政官のすり合わせを経た政治主導の政策作りがされるようにならねばならないと思う。
さらに英国の現状では、官僚が民間に下り、再び戻っているケースが増えているという。官の中に新鮮な風を送り込もうという考え方だが、日本でも出入り自由の官僚の人事制度をもうけるべきではないだろうか。天下りに目くじらを立てて閉鎖的になり過ぎると、世の中を知らない官僚ばかりの組織になってしまう。役所にはいつも優秀な人材が必要で、そのための法整備をすべきときにきていると思う。
塩崎 恭久氏
衆議院議員・外務副大臣
昭和25年 愛媛県出身
昭和50年 東京大学卒 日本銀行入行
昭和57年 ハーバード大学大学院修了
平成5年 衆議院議員初当選
平成9年 大蔵政務次官
平成15年 衆議院法務委員会筆頭理事
平成18年 外務副大臣