デフレ脱却の道筋

テーマ:「デフレ脱却の道筋」

平成17年11月例会
ゲスト/杉田 亮毅 先生

◆金利政策緩和の難しい舵取り


 金融の量的緩和で資金を供給し、しかもゼロ金利政策をとっている。金利が2〜3パーセントほどで、消費者物価も2〜3パーセントくらい、名目成長率が4〜5パーセントで上がっていくくらいが理想だと思うのだが。

 何年かかけて金利を戻していく過程が非常に難しい。統制経済ではないため、市場金利とも連動し、舵取りに細心の注意が求められるのだ。特に債券の値段が下がったり、株価が上がったりなど、方程式は一様ではない。国債をもっとも持っているのは銀行などで、金利を上げていくことで国債価格が暴落したりすると、また、金融機関に大きな損が生じかねない。

 現在の日本の状況を一言でいうと、デフレ脱却前夜にあるということだ。ただ、物価の動向については大きく3つの要素がある。企業物価については、すでに2004年からプラスになっている。これに対し、日銀が最も重視しているのは消費者物価だ。消費者物価については、ほぼ横ばいのゼロに近い数値で推移している。もう一つは、経済産業省が見ているのは、製品価格と消費者物価も取り混ぜながらGDPを計算するときの物価指数であるGDPデフレータ(総合物価指数)である。そして変動はあるもののこのGDPデフレータはまだマイナスなのだ。

 では、デフレ脱却はどう判断すべきか。物価がプラス上昇を3か月は保ったときだという。この10月の時点では、マイナス0.1パーセントほど。これがゼロになり、プラスになるのは、来年の1〜3月ないし4〜6月と予想される。日銀の金融の超緩和を軌道修正する判断を下す時期は、2006年のゴールデンウィーク前後ではないかと思われる。だが、実際にデフレ脱却を宣言できるのは、内需の回復傾向が強くなることが前提だろう。日本の内需の回復は予想以上に進んでおり、むしろ輸出が鈍化した。このところ内需を牽引しているのは個人消費で、堅調になりつつあるといってよい。それを支えているのは、業績回復による賞与の上昇、時間外労働収入の伸び、雇用の回復である。

◆デフレ脱却以降の景気はどうなるか

 日本経済史上、最長の景気回復基調に入っていくのではないかと考えている。

 2005年7〜9月期のGDP統計では、前期比プラス0.4パーセントであまり伸びは見られないが、内容を見ると内需が尻上がりに好調になっている。特に個人消費が堅調で、中でも住宅建設が久しぶりにプラスに転じたことが注目される。

 デフレの時代でもリストラなどで賃金も上げず、設備投資も抑えてきて利益を上げられる体質を作ってきた企業は、デフレ脱却すれば今以上の利益が上げる可能性が初て出てくる。そこで、やっと雇用を増やすとか鳥貝金を上げ、拡大していこうという意識が生まれることになる。このときに、政策的に早まった増税などで、拡大への意識を抑えないようにして欲しいものだ。

 ところで、みずほ証券のチーフエコノミストである佐治氏は、今の景気回復傾向は2013年まで続くと踏み込んだ発言をしている。政府が消費税、年金保険料、医療費負担などを上げれば上げるほど、景気は持続すると分析している。80年代後半の米国の状況のように、家計の厳しさが続くと主婦が外に働きに出る率が高くなり、可処分所得が増えることで個人消費が伸び、景気に貢献していくというのだ。さらに女性が外に出なければならない必然的要因が人口減少だ。すでにそれは始まっており、女性が働きに出ることで生産人口減を10年くらいは抑えることができるという。そのための環境づくりとして保育園や労働条件整備が急速に進むことになる。家事を支援する産業などを含めた構造変化を考えると、2013年までこの景気拡大は続くと分析しているのだ。

 そこまでの景気継続があるとは判断していないが、息の長い成長期に入っていることは間違いない。それを支える産業の筆頭は情報産業ということで、情報家電が自動車と並んでリードしていくことになろう。

杉田 亮毅 氏杉田 亮毅氏
日本経済新聞社代表取締役社長

昭和12年 長野県出身
昭和36年 横浜国立大学卒 日本経済新聞社入社
昭和46年 ワシントン特派員
昭和59年 東京本社編集局経済部長
平成02年 東京本社編集局長
平成10年 代表取締役専務 
平成12年 代表取締役副社長
平成15年 代表取締役社長