変化の年を迎えた日本の証券市場

テーマ:「変化の年を迎えた日本の証券市場」

平成17年9月例会
ゲスト/松本 貴司 先生

◆最近の株式市況の特徴

 今回の選挙の自民党圧勝により、構造改革進展への期待感から、海外投資家が日本の株を積極的に買いに入り、市場高騰のきっかけとなった。最近の市場は、大都市圏の基準地価がプラスになり、デフレの終わりが見えてきたとの共通認識が出てきて、そのの活況を支えているようだ。

 ただ日経平均での株価の動きだけでは、株式相場の中身が見えにくくなってきている。株式市場全体の動きと日経平均の動きが大きく離れ始めているのだ。今、業績のよい会社と悪い会社の格差が大きくなり、それが株価の格差に現れてきているといえる。

 日経平均と同等の動きを見せてきた、日本のリーディングカンパニーであるトヨタが漸く日経平均を上回るパフォーマンスを見せ始めてきた。また、ソニーが収支の下方修正を発表して元本割れになったのに対し、松下が大きく値を上げてきたことなど、同業種の中でもプラスの会社と元本割れの会社というように、大きく分かれ始めている。その意味では、業績の良し要しが株価に反映されるようになっており、より銘柄を選びやすくなったともいえそうだ。

 さらに、業績が上がって株主への配当を払い始める会社も増えてきたことを好感して海外の投資家もさらに注目することにより、日本の株式市場も国際化してきているともいえそうだ。

◆ゼロ金利解除と証券市場


 一方、デフレ脱却を見越して来年にもゼロ金利が解除される予測があり、この秋から来年にかけて、金融機関の資金の流れが変わってくるのではないだろうか。債券相場が下落し証券市場に少しずつ流れてくるという観測だ。2000年以降、金融機関は株を売り続けてきたが、来年あたりから売り越しの金額がかなり少なくなる動きが出てくるだろう。ゼロ金利解除は日本の証券市場には大きなプラス要因になるといえる。

 金融機関にとって、債券に投資をするか、証券に投資をするかにより、業務純益が大きく変わることになる。地方銀行など、過去十数年間で株で大きく損をした機関は、デフレの終わりで金利が上がることを考え、価格が下がる債券から、運用先を直接の株式投資よりはリスクの低いものに向かう傾向が強い。彼らが注目しているのは、ファンドである。投資信託に資金を投入する。もう一つは、東京証券取引所で扱っている不動産の投資信託も注目されているようだ。1年の利回りが3から4パーセントと大きい。

 最近の株式市場の言葉に、バリュー株というのがある。高配当の会社の株式をいう。今、新たに銀行などで設定される投資信託は、証券会社を介して販売される投資信託より販売総額が多くなってきた。10月からは郵便局でも投資信託が販売される。

 今売れ筋のファンドは、銀行では毎月分配型の海外の債券市場で運用するもの、株式ファンドの中での売れ筋は、配当の利回りの高い株に投資をするものである。個人投資家も直接に株式銘柄に投資をするより、安定的に配当が出てくるファンドに着目する例が増えているのだ。

 これは銀行を通じて投資信託が販売されることで投資家の裾野が広がってきたことになり、証券市場がより活況を示す流れが出来てきた。銀行のカウンターの一角に証券を扱う窓口もあったりするので、定期預金を取り崩して投資信託で運用しようという流れもでてきており、このことも証券市場にとって大きなプラス要因になっている。

 さらに2007年、2008年になると、団塊の世代が定年退職を迎え、 50〜70兆円ともいわれる退職金が金融機関に入ってくることになる。

この資金の取り込みに各金融機関が知恵を絞り始めている。団塊の世代は公的年金に対する危機感をもっており、しかも証券市場が活況を呈していることもあり、老後の資金を自分で運用先を決めたいという意識が高い。

 株価が上がり始めて2005年で3年目だが、上がり始めた1年目は7607円という日経平均の安値から1万1千円というレベルまで大きく右肩上がりで上がった。この2年間はほぼ横ばいだったが、2005年8月に1万2千円を超えて1万3千円まで大きく上昇し始めている。しかも、取引量が過去最高にまで増え始めた。こうした状況から判断すると、株式市場が大きく様変わりをしてきて、今後日本の株価が大きく上がっていく環境が整ってきたと考えていいのではないだろうか。

松本 貴司 氏松本 貴司 氏
岡三証券(株)証券情報部長