日本経済の今後に大きく影響するであろう情報通信産業の収益率は、欧米に比べてまだまだ低いものがある。ただ単純に、今収益が低いからだめとは言い切れない。これからの10年、20年を考えたとき、IT産業は日本のリーディングインダストリーになっていく、いや、そうならなければいけないからである。
中小企業や地方経済の状況を見ても、まだまだ厳しいものがある。といって、中小企業だけをよくしようとしてもなかなか難しい。やはり国全体を牽引するようなリーディング産業がないと経済が発展しない。戦後の経済を傭撤すると、まず繊維がリーディング産業としてあった。繊維が少し悪くなってくると、それに代わって鉄鋼・造船が出てきた。その国際競争力が落ちてくると、自動車・家電が台頭するようになった。例えばトヨタがよくなると、トヨタばかりでなく、素材や部品、エレクトロニクス、製造機器など、いろいろな分野の裾野も広がることになる。車と家電ではぽ110兆の産業で、日本のGDPが500兆であることを考えると、いかに110兆が大きいかが分かる。
もちろん、自動車が今後も国際競争力を保持すると思うが、同時に次の時代をにらんで、もう一つ大きな核を作っておく必要がある。そうなる可能性が高いのが、IT産業なのだ。
最初のCは、コア・コンピテンス(集中と選択)である。あまりに多くのことに手を出しすぎたアメリカの企業が、得意分野に集中し、シェアも取り、次の投資もしっかりするという戦略に切り替えようとしたとき、使われたのがこの言葉で、今、まさにこの言葉が要とされるのが日本の情報産業だ。
二つめのCは、基幹技術を自前のものにしていくことで、コア・テクノロジーと呼ぶ。垂直統合型の日本企業においては自前で全てをしようとするのに対し、欧米の企業は水平分業型で、各企業が得意分野を決め、そこで圧倒的なシェアを持つ。日本企業はそれらの世界企業に頼りながら、付加価商売してきた。今の10倍の速さで10倍の容量の計算ができる次世代のITにおいては、ソフトでもハードでも素材でも、ナノテクでトップをいく日本ならば基幹技術で世界的シェアを確保することもできるだろう。
三つめのCには、コモディティー・トゥー・ソリューションを挙げたい。単体での強みから、一つの解決策での強みに変えていかねばならない。携帯、デジタル家電、カーナビなどでは、個々の商品をとったら日本が国際的に優位を保っている。ただ、製品レベルの強みは次の製品に乗り越えられることもある。強い個々の製品をネットワーク化することにより、産業界全体がまとまっていくような方向にもっていくことを考えなくてはいけないのではないだろうか。
3Cをベースにすれば、必ず日本のIT産業は復活をし、その流れは本質的に日本のIT産業の競争力を変えるようなものとなっていくのではないかと考えている。
現在、党の企業統治委員会で事務局長をしており、独占禁止法の改正、会社法制の改革、税制の整備、産業再生法の制定など日本のM&Aの環境整備に取り組んできた。これにより業界の再編が進み、M&Aの件数も増えた。ただ、欧米に此べてM&Aの経験不足は否めず、敵対的買収を仕掛けられ、慌てて防衛策をとるような案件もみられる。経営自体がM&Aや買収に対して神経を使っていないのだ。ただ、ライブドアによるニッポン放送買収などもあって、その辺の意識はがらりと変わってきた。
日本ではまだまだTOBのルールなども完全には整備されていないので、洗い直しもまだまだ必要だが、徐々に整ってきた。さらに経済産業省の企業価値研究会でも買収に対する防衛策のガイドラインを発表している。防衛策とは、一つは企業価値を維持向上するための手段として使うべきものとする。二つは事前に開示して株主の意思が反映されたものとする。三つは必要性、相当性確保の原則に則り、過剰防衛や乱用にならないようにするなどだ。
茂木 敏充 氏
元国務大臣
昭和30年 栃木県出身
昭和53年 東京大学経済学部卒 日本銀行入行
昭和58年 ハーバード大学、大学院修了(政治学・政策科学専攻)
平成5年 衆議院議員初当選(旧栃木県第二区)
平成9年 衆議院外務委員会理事
平成10年 自由民主党副幹事長
平成15年 国務大臣
(沖縄および北方対策・個人情報保護・科学技術政策情報通信(IT)担当)
平成17年 衆議院議員 政治倫理審査会委員