デフレが今完了しているとはいえず、最終局面にあると思っている。日銀総裁がデフレ脱却は2006年と発言されたが、景気自体は昨年後半から持ち直している。今年は3%の成長も可能だろう。ただ、原油の高騰がアメリカや中国に与える影響などが懸念材料である。それでも、来年も1〜1・5%の成長は見込めるのではないだろうか。
ここ川年の日本でのバブルの発生と崩壊過程を見ると、戦争に匹敵するダメージから立ち直るのに13年を要している。現況は中国からデフレとインフレの両者を輸出されるような構図になっている。まず消費財を中心にデフレ圧力になっており、中国と日本のコストがもう少し近づくまではやはり続くことになろう。一方で中国からのインフレ圧力もある。中国では鉄鋼、化学関連を中心とする素材が不足しており、日本の鉄鋼業界もフル操業だが、国内の自動車などが鉄鋼の値上げを受け入れさせられる状況にもある。ただ、上がるものと下がるものの全体のバランスからいうと、内需も少し出てきたので、一方的なデフレ圧力という関係はこの1年ずいぶん変わってきている。卸売物価はプラスに転じ、消費者物価は完全にデフレを脱却していないとはいえ、一定期間プラスが続けばデフレ脱却宣言となろう。
今後の大きな課題は、ゼロ金利政策をいつの時点でどういう手順で転換していくのかにある。ゼロ金利からの転換が早過ぎると、せっかく浮上しかかっている経済に水を差すことになり、遅過ぎると金融がだぶつくので将来インフレを再起させる原因ともなりかねない。
金利が上がると、株価は上がるものの、国債価格が下がることになるため、それが急激に起こると国債価格の暴落にもつながり、新たな日本経済のリスク要因ともなる。特に金融機関は膨大な国債購入をしており、不良債権を処理してところで、国債による損失は大きなダメージを金融機関に与えかねない。とはいえ、デフレ脱却の折には、緩やかな形であれゼロ金利政策からの転換は図られることになるだろう。
デフレ後、輸出だけに頼らずに日本経済がやっていけるようになるかは、日本の技術革新にかかると思う。現在、設備投資に資本投下がかなりなされており、新技術を基に生産化していこうという動きが底流で続いている。06〜07年にかけて、設備投資の結果が現れてくるのではないだろうか。日本の場合、モノづくりが得意分野で、ITとモノづくりをどう繋げていくかが大事であり、デジタル家電などはその代表といえる。
長期的に見ると、日本経済の大きな問題は人口問題である。06年ころから人口減になる見通しであり、すべての業界で需要減になるのは明らかだ。ただ、日本一国だけで考えると問題山積だが、アジアが21世紀は大きな成長を遂げる経済圏になりつつあり、日本はこの地域と一緒になって生き抜くという発想をすると、需要をる。アジア経済圏の考え方を持つべき時期にきているかもしれない。中国が積極的に出て来ており、中国一辺倒への懸念から、日本・韓国も前面に出て欲しいとのアセアン諸国の要望もある。中国やアジア諸国では作れない技術オリエンティッドなもの、高付加価値のものを作れば、アジアの人々の需要を喚起できるのではないか。アジアの成長を脅威ととらえるより、それだけの市場を近くに持っていると発想転換すべきときなのであろう。
杉田 亮毅氏
日本経済新聞社代表取締役社長
昭和12年 長野県出身
昭和36年 横浜国立大学卒 日本経済新聞社入社
昭和46年 ワシントン特派員
昭和59年 東京本社編集局経済部長
平成02年 東京本社編集局長
平成10年 代表取締役専務
平成12年 代表取締役副社長
平成15年 代表取締役社長