日本銀行が内閣府と遣うのは、金融機関の状況を日々見ていることにある。それを通じて、日本銀行は、マクロばかりでなくミクロの経済状況も理解している。
GDPから日本の経済状況を眺めると、2001年のITバブル崩壊以後の景気回復ペースは、米国と同じか若干高いピッチで這い上がっているのがわかる。さらに、景気短観でも回復基調が読み取れる。また、零細企業の状況を国民公庫の資料から見ても、上向きであると分かる。しかし、規模が小さい企業ほど、その感覚は鈍い。
景気回復の要因として、第一にまず、輸出の伸びが挙げられよう。それに伴って企業の収益が改善し設備投資が増えてきたといえる。特に、アメリカのIT関連の需要と、中国の素材産業の需要の伸びが、輸出を支えている。第二の要因は、企業自身のリストラ努力で、相当にコスト削減を図ってきたことにある。
しかし、このまま景気回復は順調に進むのだろうか。懸念材料の一つは原油、二つめはIT関連の今後の調整がどうなるか、三つめは賃金の伸びとそれに伴う家計支出の伸びがどうなるかということである。
原油価格の高騰の原因は、世界経済の回復による需要の伸びと、原油供給力があまりないとの観測が流れていることにあろう。もし世界の景気回復をそのまま反映しているものならば、景気のマイナス要因と考える必要はない。もし、供給面の要因が大きいなら、景気を押し下げる原因にもなってくる。ただ、景気の先行き不安要因として原油価格の高騰を大きく見る必要はないのではないか。
二つめの懸念材料はIT関連である。現在、IT関連の在庫は少し増え、その調整が行われているが、それが大きな調整になるかが問題だ。今のところ最終需要自体は引き続き堅調であり、在庫率も非常に高いという水準ではないので、経済を下押しする力としては今のところ小さいといえる。
三つめの懸念材料は、雇用の動向である。景気の回復が家計はなかなか反映されない状況をデータで読み取れることからも、雇用不安による家計消費抑制の景気のに及ぼす影響は、今後も注視する必要がある。
ところで、日本銀行は消費者物価指数がプラスに転じるまでは、現在のゼロ金利政策を続けると約束している。最終的に景気がどうなるかは上記のようにいろいろな要因に依存するが、景気が回復基調にあると、今度は日本の財政がこのままでもつのかかが懸念されてくる。日本銀行がデフレにもしないし、インフレにもしない金融政策をきちんと実施していくことに対して国民の信頼感がないと、長期金利は上がってくることになり、景気の行方も微妙になりかねない。そういう意味で、経済の先行きをどのように読むかが何より大事になってくるのである。
白川 方明 氏
昭和47年東京大学卒業、日本銀行入行。
大分支店長、ニューヨーク駐在、収入役を歴任し、
現在理事として企画局、金融市場局、金融研究所を担当。