EUの加盟条件の一つに、財政赤字をGDPの3%以内にすることがある。日本は8%で、ヨーロッパにあったら生き残れないことになる。
さて、郵便局が郵政公社になり、郵便事業では黒字を確保したが、法改正で運用できるようになった郵貯233兆円、簡保121兆円、年金積立107兆円は、まず国債購入にあてられ、今年度は76兆円に上る。さらに、財政融資資金として、特殊法人などに無利子で413兆円が流れ、運用とは名ばかりの状態だ。特に出口側の特殊法人の中でも不良債権を抱えているのが、首都高、阪神、本四などの道路公団で、合計すると40兆円に上る。その他、住宅金融公庫以外の融資先も貸越が大きく、日本経済がいつまでも沈滞している最大の原因はここにある。
道路4公団には★兆円の借金があり、国鉄民営化のときが20兆円だったから、その倍にもなる。平均金利は3%と高いのは、入り口の郵貯などの運用利益が3%ないと崩壊してしまうためだ。4公団の料金収入は2兆7千億円、経費は約7千億円となっている。
今回の道路公団民営化は、保有財産を2分割して、新たな民営会社へ貸す形をとる。保有機構という新たな公団が経費を除いた2兆円を預かり、リース料は2兆円を限度とすることに決定した。
2兆円と大きな金額が入ってくるようだが、金利3%で借りた財政投融資亜兆円の金利として、毎年1兆2千億円を払わなければならず、完済するには50年かかる。
道路公団にはどんな問題があったか。赤字の理由は過大な需要見通しと過小な費用見通しだ。アクアラインの場合、当初1兆1500億円でやるとし、結局1兆4400億円かかっている。一方、1日3万3千台通る見通しを立て、今は1万2千台しか通行していない。まるで採算に会わないのである。事業費の内容を精査すると、資材の価格を談合してきたことも判明した。高い資材で赤字をさらに大きくしてきたのだ。
高速道路の路線別収支状況を見ると、自力で償還済みの路線は第一東名、名神など6路線あり、当然通行料はただになるところを法律改正で修正し、赤字道路でも作れるように道路計算方式に変えた。それは必ずしも悪いことではないが、少なくとも6路線の黒字で他の赤字を埋めているのが実情だ。ただ、現状の赤字相殺してもらっている7千キロでやめてくれればいいが、さらに9千キロの着工命令を出している。そもそも道路建設案件や、その資金を供給してきた郵貯の融資先などについては、国会を通さずに役人がいいようにしてきたのが問題だったのだが。結局、最終的に、9千キロまでは建設してもいいことになってしまった。ただ、片側1車線でもいいではないかということで、経費を少し削ったが。
それだけならいいのだが、道路公団が新会社になるのは名目だけ。国の道路保有機構が債務保障をするかわりに作った道路をもらうということで、新会社はリース料を払うだけ、融資した銀行は国の保障があるということで、これまでの道路公団と変わらないのだ。
結局、今回の道路公団民営化は形ばかりで、負け戦だったということになるのである。
水野 清 氏
元内閣総務庁長官
大正14年 千葉県出身
昭和26年 東北大学卒 NHK放送記者
昭和42年 衆議院議員初当選
昭和58年 建設大臣
平成元年 自民党総務会長
平成5年 衆議院議員9回当選
平成10年 「日本再建のための行革を推進する700人委員会」代表世話人