日本経済の再浮上は始まったのか

テーマ:「日本経済の再浮上は始まったのか」

平成15年10月例会
ゲスト/杉田 亮毅 先生

◆経済再浮上の条件は整ってきたが…

 現在は、再浮上前夜にあると思っている。中小企業と地方経済に火が点いてこないと再浮上とまではいえないからだ。明るい材料としては、4ー6月のGDPの実質伸びがプラス3・9%という高率を示している。また、今年度の政府見通しは0・6%だったのを2・1%に修正している。これをもって、再浮上は始まったと小泉政権は訴えているのだ。この数値は実質で、売上を示す名目はあまり伸びていない。ただ、今年は2期連続で名目にもプラスが出ており、今年度の名目成長も、これまでマイナスだったが、ゼロくらいに行くと思われる。

 株式市場は、大幅な増益見通しの大企業を中心とする収益状況にいち早く反応し、特に海外の機関投資家からの買い越しが続いている。国内の個人投資家も追随の姿勢を示し、昨年までは1割ほどだったのが、30%くらいまで株式投資全体に占める割合が回復してきた。もっとも税制改正で配当課税が大幅に緩和されたことにもよろう。

 今年4月のダウ平均のボトムが7600円、それが1万500円前後まで回復してきており、そこからの上げ率は40%となる。この上げスピードは1953年以来のもの。これにほっと一安心していたのは、銀行と生命保険、年金ファンドであろう。

 設備投資も回復してきている。4−6月の実質成長の8割を占め、今年度の設備投資計画は久しぶりに5〜6%のプラスになる見通し。経済の柱は個人消費、輸出、財政、設備投資で、そのうち輸出と設備投資が比較的にがんばっている。個人消費はまだまだ鈍く、企業のリストラなどが続いている

以上、仕方のないところだ。ただ、株式が上がってくると、含み利益を好感して、高額商品が動いてくる可能性もある。輸出は前年比6%ほどの伸び。しかし、財政は締めており、竹中蔵相もGDPに対する歳出の比率は当面変えないという。特に公共事業費はカットしていく方針にあるので、地方経済にとっては厳しい状況が続く。

 不良債権は、昨年度大手銀行融資額の8%を占めていたが、現在7%になり、05年には5%以下に落とす目標だ。そこまでくれば、正常に近い状態といえよう。りそなに対する公的資金の投入によって、この間題の大きな山は一つ越えた。外人投資家の買いは、りそなへの対応に安心感を覚えたためもあろう。

 そもそも小泉政権がこれまでの政権とどう違うか。バブル崩壊後、歴代の政権が採った政策は公共事業を中心に需要を多くする需給ギャップの縮小化だが、効果が上がらず、失敗に終わっている。そこで小泉政権は、供給力のほうを下げる政策を採った。生産量が過剰のままでは、デフレにつながる。その状況で需要を高めても、焼け石に水だと。供給量減政策の柱として、不良債権処理と公共事業のカットを立てたのである。その結果、98年以降はGDPが縮小し、520兆円から現在は490兆円になっている。

 引き締めの中でも、新たな光が見えつつある。半導体製造の逆襲やナノテクによるロボットなど、新たな技術革新の波がつい目の前まできている。リストラによる利益確保という消極的なものから、積極的な生産活動の拡大へ、05〜06年にかけて花開く可能性もある。そのときこそ、日本経済の浮上と声を大にしていえるのだと思う。

杉田 亮毅 氏杉田 亮毅氏

日本経済新聞社代表取締役副社長

昭和12年 長野県出身
昭和36年 横浜国立大学卒 日本経済新聞社入社
昭和46年 ワシントン特派員
昭和59年 東京本社編集局経済部長
平成02年 東京本社編集局長
平成10年 代表取締役専務 
平成12年 現職