壊す改革から創る改革へ

テーマ:「壊す改革から創る改革へ」

平成15年9月例会
ゲスト/塩崎 恭久 先生

◆改革にわき道はない、王道を突き進むべし


 ラグビーでタックルをするとき、果たして選手は痛いと思うのだろうか。たぶん、痛いとは思わないに違いない。そもそもしなくてはならないことは、冷静に考えれば痛みを伴うものの、本気ですれば痛くないことなのだ。しなければならないことをして痛く感じること自体、失敗なのかもしれない。

 さて、今回の自由民主党総裁選挙は小泉首相対抵抗勢力といわれ、やり過ぎを懸念する勢力が立候補しっつある情勢にある。だが、私はむしろ小泉首相がやらなさ過ぎだと思っている。早急に、しかも正しい優先順位で懸案事項を実行すべきではないかと。その意味で、総裁選では、派閥の思惑ではなく、真の意味での正しい構造改革を争点にすべきなのだ。

 経済面では、長期保有の債権のうち、有価証券を帳簿上も時価で評価し、取得価格より50%以上安くなった場合は損金として立てることになっているが、このことがデフレ加速に通じているのではという議論がある。また、事業用固定資産について、将来収益をバランスシートに記入して、減価した場合には損として立てるという減損会計を2年後に導入することになったが、この導入を延期しろとの議論もある。

しかし、会計は所詮鏡のようなもので、鏡にどう映ろうと企業実態は変わらないのだから、会計基準をいじり回すだけでは何の経済改革にもならないと私は思っている。また、デフレがあるから不良債権が増えてしまうのだから、まずデフレを解決して新たな不良債権を生み出さないようにし、それから構造改革をすればいいと主張される向きもある。

 そもそも不良債権というのは、地価が下がったために出てくることも若干はあるのだが、基本的にバランスシートでは貸している先の企業がいいか悪いかを反映しているだけなのである。つまり、貸し先の企業が借主に返せない、あるいは返さないことが不良債権であって、その原因の中に、地価が下がったことがあるのかもしれないが、地価が下がったことは担保価値が下がったということに過ぎず、必ずしも借りたものを返す返さないに直結するものではない。デフレは実態経済の結果として出ていることであり、デフレをまず解決すること自体を経済政策の問題設定とするのなら、その政策は間違っていると思う。デフレと不良債権問題は同時に解決すべきものなのだ。

 要するに、不良債権は貸し先の企業が元気になれば不良債権でなくなるわけだから、貸し先企業の収益力の回復をどう実現するかが問題なのである。もちろん、バブルのときに借りなくてもいいものまで借りて困っている例もあるが、基本的に、不良債権問題の解決はデフレ対策と産業再生を同時にすべきだということである。デフレを解決することを先に持ってくると、日銀がたくさんのお金を供給すればお金がだぶついて需要につながるといった意見が出たりするが、本来はリストラクチャリングという構造改革で企業再生を果たした日産のように、正面突破、王道を行くことでしか経済の構造改草もできないのである。

 われわれがしなければならないことは、どこの国にも負けない産業構造をどうやってつくっていくのかということである。そのために国はどういう税制を準備できるのか、どういう教育で研究開発をバックアップできるのかといったことを考えるべきなのだと思う。

塩崎 恭久氏 塩崎 恭久氏
衆議院議員

昭和25年 愛媛県出身
昭和50年 東京大学卒 日本銀行入行
昭和57年 ハーバード大学大学院修了
平成5年  衆議院議員初当選
平成9年  大蔵政務次官
平成15年 衆議院法務委員会筆頭理事 
      自民党政務調査会副会長