「子供は親にパラサイト、親は会社にパラサイト、会社は政府にパラサイト」と発言したら、若い人は「国債の大量発行で、親世代は子、孫世代の分まで食っているではないか」と反論されたこともある。いずれにしても、自立経済が大事だと考え、かようなテーマでお話ししたい。
ダーウィンの『種の起源』に、「生き残るものは、最も強い種ではない。最もインテリジェントな種が生き残るのでもない。変化に適応したものだけが生き残る」という記述がある。イトーヨーカドー・グループのコーポレート戦略を決定する場でも、常にその感覚で議論してきた。基本には忠実に、しかし変化には機敏に対応することが、生き残るために必要なのだ。顧客のニーズは必ず変化する。その変化にはてきぱきと対応するのだと。
では、顧客ニーズはどうすれば分かるのか。アンケート調査で分かるというものでもない。こういうものが書ばれると自分で仮説を立て、トライし、失敗すればまた変えていく。また、経験則として、死に筋の商品をいつまでも置いておくと、同じ棚の他の商品も売れなくなり、排除すると、そばの売れ筋商品はさらに売れる。まして、死に筋商品を排除したところに売れるだろうと仮定した新たな商品を置き、それがニーズにマッチしていれば、残した商品とともに売り上げが大きく伸びる。顧客がきたときにいい商品がないのは商人の恥だが、死に筋商品をそのままにして新たな勝負にでるのは、商売人の能力がないといえよう。
国の経済の舵取りでも同じことがいえると思う。問題が起こったときに、できるだけ早く、それも徹底的に膿を出すようにしないと、傷を大きくしてしまうのだ。不良債権処理問題に当たっても、ゼロ金利政策を続けることは、問題を先送りしているだけに過ぎず、本来市場経済から排除されるべきものを守る形になって、経済の活力を取り戻すことを阻んできたといえるのではないだろうか。
ところで、現在社長を務めているアイワイバンクについて述べたい。平成13年5月に21世紀型の銀行として開業し、セブンイレブンを中心としたIYグループ各店にATMを設置して、顧客により身近で便利な金融サービスを提供している。提携金融機関は銀行の他に、ノンバンク、証券、クレジットカード、消費者金融、郵貯、信金と広がり、社会インフラの一つとなっていくものと考えている。これからの事業展開としては、多くの金融機関との提携がされているからには、お金の出し入れ以外にも、投資信託や国債の購入に利用、画面を使った広告媒体としての利用までも視野に入れている。
ただ、紙幣の刷新が検討される中、ATMのソフトの変更には莫大な費用がかかることになるとの指摘もある。しかし、最先端のATM機を導入しているので、衛星通信を使った改訂紙幣読み取りソフトのダウンロードも、他金融機関の端末でかかる費用よりかなりローコストでできる。また、犯罪リスク面では、ATM機自体に高性能のカメラが内蔵され、壊して現金を強奪しようとすると、取り出す前に紙幣が汚されてしまう機能もついている。
安全・確実・迅速に顧客のニーズに応える新たなコンセプトの銀行として、より充実した金融サービスを提供できるよう努めたいと考えている。
安斎 隆 氏
アイワイバンク代表耶綿役社長
昭和19年 福島県出身
昭和38年 東北大学卒 日本銀行入行
昭和57年 日本銀行営業局証券課長
平成4年 日本銀行経営管理局長
平成6年 日本銀行理事
平成10年 日本長期信用銀行取締役頭取
平成12年 イトーヨーカドー顧問
平成13年 現職