これからの日本外交について

テーマ:「これからの日本外交について」

平成15年5月例会
ゲスト/安倍 晋三 先生

◆国益を守る視点の外交を


 日本外交が抱えている問題がいくつかある。

 まず、北朝鮮への対応だ。平成15年1月、北朝鮮はNPTを脱退し、米中朝3カ国協議において、使用済み核燃料棒の再処理を終え、すでに核兵器を持っていると公表した。その結果、世界に緊張が走った。

 そもそも北朝鮮が93年にNPT脱退を宣言し、翌年の国連安保理非公式会議において北朝鮮に経済制裁を加える議論が始まった。それに対して北朝鮮は、経済制裁をするならソウルを火の海にすると応戦。大風呂敷を広げてきた北朝鮮だが、あながち絵空事ではなく、実際数千基の大砲がソウルに向けられている。カーター元大統領が訪朝し、枠組み合意がなされた。枠組み合意とは、燃料棒の再処理をしやすい黒鉛減速炉から軽水炉に換えることで合意し、その資金を日本、韓国、EUが負担、原子炉稼動までの燃料として米が重油を供給するというもの。この会意での最大の問題点は、すでに原爆1、2個分のプルトニウム抽出がなされていたが、片目をつぶったことにある。この経緯から、北朝鮮は、脅しが通用すること、ある程度の核は大目に見られること、交渉相手はアメリカであるという3つを学び、今、この教訓通りに実行している。

 では、どうすれば核武装をやめさせられるか。方法は、望むものを与える、彼らの首をひねる、かれらを無視する、の3つしかない。これまでは基本的に、無視してきた。北朝鮮がさらに強請り取ろうとしても、ブッシュが経済制裁に出ることは必至。そうなれば、ソウルを火の海にすると必ず個喝するだろう。そこで、つっばねられるか、経済制裁を引っ込めることになるのか、どちらともいえない。

 北朝鮮の核問題は、拉致問題と同様、まさにわが国の問題である。日本としては経済制裁で北朝鮮を困らせることでしか、かれらを我々の思う方向に動かすことはできないと思う。ただ、実行は難しい。可能性としては、先延ばししっつ交渉を続けることだが、その間に核兵器を完成させてしまうこともあり得る。1年後くらいにまた危機が訪れて、新たな交渉に入ることになるだろう。

 もう1点は、イラクを初めとする中東の問題だ。世界的に一致しているのは、中東和平の実現だが、アメリカはロードマップを発表し、初めてパレスチナの独立国家を謳った。シャロン政権は反発しているが、パレスチナ問題を解決しない限り、根本的な解決にはならない。

 さて、今回のイラク戦争では、米軍事力の強さだけが目立った。そこで学ぶべきは、日米安全保障の価値ということだ。日本の安全を守る意味ではその価値は上がっているが、日米の相互性でイコールにはならないものの、それに近い形にすることは日本の国益に沿っていることだと思う。

 次に国連の現状だ。日本は国連で決まったことを絶対視して従うという受身の姿勢になりがちだが、むしろ国益を損なう危険性があることは、今回の経緯で分かってきた。国連が人道面、環境面で果たしてきた役割は大きいが、安全保障の分野でもそうだろうか。20%に上る運営分担金を支払いながら、安保理の理事国に入っていないこと、いまだに国連の敵国条項に日本とドイツが名指しされていることを見ると、国連の改革を自分の問題として日本が取り組まなければならないと思う。

 今後は、北朝鮮、イラク、そして脅威となりつつある中国との関係をどうつくるか、国益に沿った関係性の構築が要求されているのである。

安倍 晋三 氏安倍 晋三 氏
衆議院議員
元内閣総理大臣

昭和29年 山口県出身
昭和52年 成蹊大学政治学部卒 南カリフォルニア大学留学
昭和54年 神戸製鋼入社
昭和57年 外務大臣秘書官
平成5年  衆議院議員初当選
平成12年 内閣官房副長官
平成15年 自民党幹事長