小泉首相で日本経済の再生はなるか

テーマ:「小泉首相で日本経済の再生はなるか」

平成14年11月例会
ゲスト/杉田 亮毅 先生

◆不良債権処理とデフレ対策は同時に


 日本経済は、GDPを名目で見ると、着実に縮小経済に入っている。ピークは97年で約520兆円、今年は490兆円の見通しだ。過去5年で見ると、1・5%づつ毎年縮小しているが、ここ3年は早まって、1・6%づつの縮小になっている。さらに今後3年間、縮小が同様に続くと、30兆円のマイナスになる。30兆円というと、アセアン主要国であるインドネシア、シンガポール、フィリピン3カ国のGDPの会計とほぼ同じになる。

 平均的にGDPと同じ動きをする、売上2千億円、収益150億円という企業を例にとると、3年間で1・6%ずつ売り上げが減って、120億円の売り上げ減になり、リストラができず経費が変わらなかったと仮定すると、利益が30億円と厳しいものになる。さらに5年続いてしまうと、200億円の売り上げ減で、たちまちマイナス諭億円の赤字に転落してしまう。デフレになり、物価が下がれば豊かな暮らしが出来る向きのことがいわれるが、企業がデフレに見舞われれば、賃金引下げならまだいいほうで、失業ということにもなりかねない。国の財政も税収減で福祉が減らされ、減税どころか増税になるかもしれない。日本の経済政策は、不良債権処理とともにデフレをどう止めるかに大きな課題があるのだ。

 そこで内閣を見ると、金融大臣に実務経験のない竹中氏を起用した人事そのものに問題ありだ。さて、竹中プランの最大の問題点は、税効果会計の見直しということにある。銀行が不良債権に対して貸し倒れの引当金を積み立てるのだが、積立金の一部は将来還付され、その分を一定の割合で自己資本に算入できる。これが税効果部分で、竹中案では5年分で最大40%から、1年分10%に縮小するという。差額を自力で埋められないときは、公的資金注入ということになる。そうならないためには、銀行は貸し剥がしをするしかない。自民党の反発もあり、結果的には税効果会計見直しは一時棚上げとなったのだが。

 しかし、銀行としては自己資本率を上げる努力を迫られていることに変わりはない。自己資本確保のための増資などを目論むがなかなか思惑通りには行かず、結局、貸し金回収を急ぎ、新規貸しはやめ、資産はできるだけ小さくしておこうということになる。

 そもそもデフレ対策を進めなければ不良債権処理も進まないと考えられる。デフレ対策無しに不良債権処理を進めれば、株も下がり、景気もさらに落ち込む。そうならないためには、直接金融市場にお金が流れ込むように、キャピタルゲイン、配当も含む大幅な優遇税制を導入し、都市プロジェクトなどの公共事業といったデフレ対策を用意した上で、不良債権処理を進めるようにすべきだろう。

 小泉内閣は、日本経済の非常時認識が薄いように思われる。デフレ対策と不良債権処理をすすめていくためには、あらゆる場面での強力な施策が必要で、土地の証券化、オーバーサプライの是正、為替レートを円安等へ、高度な舵取りが要求される。果たして小泉首相にできるのかというと、これまでの経緯を見るに、小泉首相では無理ではないかと思わずにはいられない。

杉田 亮毅氏杉田 亮毅 氏
日本経済新聞社代表取締役副社長

昭和12年 長野県出身
昭和36年 横浜国立大学卒 日本経済新聞社入社
昭和46年 ワシントン特派員
昭和59年 東京本社編集局経済部長
平成02年 東京本社編集局長
平成10年 代表取締役専務 
平成12年 現職