今後の日本経済 

テーマ:「今後の日本経済」

平成14年10月例会
ゲスト/榊原 英資 先生

◆政府は経済状況を把握して、思い切った手を打て

 小泉首相の最大の問題は、政策を丸投げしてしまうことにある。北朝鮮問題を田中氏に、金融問題を竹中氏に投げた。しかし、政策を丸投げはしてはならず、自分の周りに担当チームを作り、議論をさせてから施策とならねばならない。道路公団問題は、猪瀬氏に丸投げし、結局改悪の結果となった。

 今回、竹中氏を金融担当に据えたため、不良債権問題は処理できないと判断され、市場も敏感な反応を示している。公的資金投入の場合でも、経営者の責任は問わず、投入額も少ないだろう。これでは、銀行のリストラ努力が緩むだけで、借り手の再編成につながらず、状況はよくなる見通しがない。

 問題のデフレは、金融緩和や減税で解消されるものではない。デフレの最大原因は、金融が緩んでないことではなく、いい投資案件がないことにある。株価収益率からいっても、生産性上昇率を見ても、90年代以降、投資をしてリターンを期待できる日本企業がほとんど見当たらず、中国などへの投資に流れてしまっているのである。

 では、日本に投資先がないかというとそうではない。例えば、医療サービスが自由化されれば、その部門にはかなりのポテンシャルがある。農業関係が自由化されれば、企業化の可能性は大きい分野だ。特区申請で医療と教育と農業については、多くの自治体が名乗りを上げている。

 投資先のないことについての対策がほとんどとられていないことが問題である。法人税減税をしても、余剰資金が投資には向かわないから、景気浮揚効果があまりない。他の景気刺激策にしても、同床異夢のこと。投資オポチュニティーをどう創るかが根本にあるべきで、それが見当たらないのが今の政策である。

 世界経済に目を移すと、アメリカでは消費動向が微妙になり、持ち直してきた市場にどう影響が出るかわからない。もう一つはイラク問題。90%はイラク攻撃ありと見られるのは、情報機関を駆使しても阻止できない自爆攻撃を唯一防ぐ手段は、先制攻撃に他ならないからだ。楽観的には短期に戦争は終わり、経済にプラスになるという考え方がある。泥沼化したとき、あるいは戦後統治はどうするかとなると、不透明なところだ。一方、ヨーロッパ、特にドイツ経済がよくない。構造改革が出来ず、デフレ傾向が見える。

 日本も含め、世界的に経済状況はよくないが、その認識があまり政府にない。大きな転換期にあるため、政府の政策も中途半端なものに終わるだろう。竹中氏はハードランディング路線に固執しないと思う。構造改革をうたいながらも、短期的にはこれまで行って来たような政策を打ち出すことになろう。

 結局、企業が生き残るためには、生産拠点を海外に移さざるを得ず、国内の経済にとってはプラスではない。指をくわえて海外流出を見ているだけでなく、規制緩和などの政策で投資可能性を広げる政策を採るべき時期にきているのではないだろうか。

野田 健 氏榊原 英資 氏
大蔵省顧問

昭和16年 神奈川県出身
昭和40年 東京大学大学院修了大蔵省入省
昭和41年 ミシガン大学経済学部留学
昭和60年 理財局国庫課長
平成7年  国際金融局長
平成9年  財務官
平成11年 慶應義塾大学教授